転職コンサルタント細井智彦氏によるコラム

WEB面接のハンディキャップとリカバー方法について 後編vol.2

WEBに限らず今後の面接で求められるのは「言語化力の磨き込み」

ここまで面接のWEB化によるハンディのリカバー法について書いてきましたが、ここでちょっと考えてみましょう。WEBでは非言語情報が不足しているので面接しづらい、ということは、裏側からみるといままでの面接がいかに非言語情報に依存していたか、ということを示しているともいえないでしょうか。印象は爽やかだけど、どこかやりとりが予定調和的でなんか本音が見えない、とか、逆に、印象がよかったのに入社したら期待はずれだった、ということは以前からいまも、面接あるあるです。そこで浮かび上がってくるのは、言語情報の重要性、つまり「言葉」です。これはリモートワークの場面でも同じです。なかなか前後の文脈や相手のパーソナリティが読めないなかで、きちんと共通の理解が得られる状態で意思疎通をするには、言葉によるコミュニケーションがとても重要です。面接も同様、パーソナリティやキャラクターといった抽象度の高い表現や主観にもとづく意思や、しっかり、とか万全を期するといった形容詞、を排除し、いかに具体的にイメージできる状態まで言語化していくか、ということがいままで以上に求められていると思います。

候補者の本音を引き出すキーワードは「心理的安全性の提供」

最後に、せっかくなので、WEBリアルに関係なく、いま面接で候補者の本音を引き出すために大事なことについて、触れておきます。心理的安全性という言葉を聞いた方も多いと思います。これは組織マネジメントにおいて、メンバーがマネジャーに対し、この人なら率直に話しても受け容れてもらえるという安全な関係性を築くこと、例えば人はだれでもミスをする存在である、ということを認めることで、メンバーがミスを報告しやすくする、というようにメンバーが安心して発言しやすくすることで組織を元気にする、という考え方です。この心理的安全性を提供することが、面接場面でも候補者への接し方として、とても重要です。特にWEB面接では、面接官がどんな人なのか非言語情報に乏しいので、この人にはどこまで本音で話ができそうか、話したことをどう受けとめられるのか、がわかりにくく、そんな状態で話すことには不安が伴います。(一方で、見た目で威圧感を与えるような人はWEBだと圧が減るので結果的に話しやすい雰囲気になる、ということでもあるわけですね・・・。)

例えばいきなり「現職への経営や上司への不満はありますか」と聞かれたらどうでしょうか。面接官が、不満というものをどうとらえているか、認識や価値観もわからない状態では、面接の場面ではなかなか正直に答えにくくないでしょうか。だからどうしても「不満がない、とは言えませんがそれが理由で辞めるような不満はありませんでした。」みたいな無難な答えに収束してしまい、結局、本音が読めない、となってしまうことは起こりがちです。こういった場面を経験してきた面接官側の関心は候補者の本音や本質を引き出すことだと思うのですが、そのために、例えば「アニメのキャラクターでいうとご自身は誰だと思いますか?」みたいな、想定外の変化球のような質問を繰り出すことに走りがちですが、ここは面接の短い時間のなかで、いかに安心して本音で話す雰囲気を生み出せるか、心理的安全性の提供に腐心したほうがよいと思うわけです。特にお互いのキャラクターが読みにくいWEBでの面接では重要なことです。そのためには、ハンディのリカバー方法にも書いたような、うなずき、あいづち、といった受容と共感による対話は、シンプルですが、あらためてとても大事で有効なアクションだとわかります。そして、さらに安全性を提供するためにできることがあります。それは、面接官から言葉による自己開示をすることです。それによって、より候補者が安心して話せる環境を提供することができます。例えばこんな感じです。

「私も未経験からの転職者なので不安だったので、お気持ちはわかります」

「現職に不満のない人は私はいないと思っております。不満があるからといって面接の評価をさげることはしませんので、どんなことに不満があったのかよかったら聞かせてください」

「入社を決めるためには残業や仕事のキツいところなどが気になるのは当然だと思っておりますので、些細なことでもかまわないのでいまのうちに聞いておいてください」

いかがでしたでしょうか。WEBに限らず面接全般に活かせることも多いと思いますのでよかったら取り入れて実践してみてください。